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令和6年度まちづくりラボ「哲学カフェ」を開催しました
令和6年度まるがめまちづくりラボ「哲学カフェ」チラシ [PDFファイル/925KB]
丸亀まちづくりラボ「哲学カフェ」
哲学者・山口大学国際総合科学部教授の小川仁志先生をファシリテーターにお招きし、令和6年度丸亀まちづくりラボ「哲学カフェ」を開催しました。
哲学カフェとは、参加者が自由に意見を出し合いながら、1つのテーマについて考える「対話の場」です。日頃当たり前と感じていることを様々な視点から吟味することで、自分の考えを整理することができます。
ファシリテーター 哲学者・小川仁志さん(山口大学国際総合科学部教授)
1970年、京都府に生まれ、京都大学法学部、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了後、商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)を経た異色の経歴を持つ哲学者。大学で課題解決のための新しい教育に取り組む傍ら、全国各地で「哲学カフェ」を開催するなど、市民のための哲学を実践しておられます。
また、テレビをはじめ各種メディアにて哲学の普及にも努められており、NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」、「ロッチと子羊」では指南役を務めました。専門は公共哲学。著書も多くベストセラーとなった「7日間で突然頭が良くなる本」や「ジブリアニメで哲学する」、「前向きにあきらめる」、「60歳からの哲学」等をはじめ、これまでに100冊以上を出版されています。
会場となったマルタスには、開場と同時に多くの方が受付に来られ、小川先生の哲学カフェを楽しみに来られた様子が伝わってきました。
まず最初に小川先生は、哲学カフェでのルールについて紹介し、地域づくりに関する問いかけが始まりました。
「哲学カフェを行ううえで、大切なルールが3つあります。1つ目は、人の話を最後まで聞くこと。2つ目は難しい言葉を使わないこと。3つ目は、全否定しないこと。哲学カフェは説得する場ではなく、納得する場です。みんなの納得のために、私から色々な角度で質問し、考え方の視点を変えるお手伝いをしたいと思います。」
「皆さんがイメージする地域づくりって何ですか?」
小川先生は、「皆さんのなかに”地域づくり”に対する大体のイメージがあると思います。簡単で大丈夫なので、皆さんの意見をぜひ教えてください。」と問いかけました。
参加者からは、「住んでいる人が安心して、楽しく暮らせる場づくりのことだと思います。」や「住んでいる人がイキイキしており、人が集まってくることかな。」、「より良い暮らしができることだと思う。」という様々な視点の意見がありました。
小川先生はさらに問いかけます。
「地域って何をするところなんでしょう?」
この問いかけには「自分が帰属し、関わるところ」、「地域は客観的なものであり、ただの場所」という声がありました。
ほかにも小川先生は、
「地域を”つくる”ってどういう事でしょうか?」
「地域づくりには話し合いが必要ですが、地域づくりにおける話し合いとはどういったものでしょうか?」
など様々な問いを投げかけました。
「じゃあそもそも、どうして市民が地域づくりに関わらなければいけないのでしょう?」
小川先生のこの問いかけにも、参加者からは「地域づくりに参加することで何が足りないのか、何に困っているのかを知ることができるから。」、「個人の問題を地域の課題にすることで解決につなげるためだと思う。」など様々な考えや意見が出されました。また、ある参加者の「今住んでいる町に引っ越してきたときは、仲間になれていないという疎外感を感じていたけれど、話を聞いてくれた時に地域の一員になれたような気がしました。」という経験に対し、小川先生は「じゃあ、参加することは自分自身のためにもなっているのかもしれませんね。」と話されました。
「大事な部分ではあるけど、行政では対応することが難しい”放置されがちな領域”。そこを補っていけるのは市民しかいません。だから、市民みんなで地域づくりに関わらなければいけないんですよね。」
小川先生の問いかけに対して、最初は発言する参加者は少数でしたが、小川先生の親しげな口調や、自由に意見を出すことのできる雰囲気づくりで、徐々に、積極的に考えや自身の経験を話す参加者が増えてきた様子でした。
「じゃあ、どうすればみんながもっと地域づくりに参加するようになるでしょう?」
小川先生は続けます。
「みんなで担っていくべき地域づくりに、何とか参加してほしい。でも、忙しいし、どうすればいいか分からない、という人も多いはず。どうすれば解決できるでしょうか?」
この問いかけには、「地域づくり、まちづくりという考えをもっと醸成していくべきだと思う。」や「学校教育だけでなく、社会教育も必要じゃないかな。」「現代人は自宅と学校・職場との行き帰りだけ。自宅、学校や職場以外の第3の居場所と時間が必要だと思います。」などの意見が上がり、小川先生も「ある哲学者の著書には”怠惰なんて存在しない。私たちが怠惰だと思っている時間は貴重な時間だ”という言葉があります。他にも”怠惰な時間が公共の時間となる”という考え方もあります。第3の場をつくるためにはみんなが”さぼる”べきなんですよ。」と意見を述べられました。その他にも、参加者からは「地域づくりへ参加することは義務じゃなくて権利だと思ってほしい。自分たちのまちを自分たちでよくする、という権利があると思います。」という意見も上げられました。
最後に小川先生は、「地域づくりをより自分事として考えるためには、自分の好きなことや大切なこととしてとらえる必要があります。つまり、”ひいきする”ことです。この会に結論はありません。今回の哲学カフェで、皆さんに、地域づくりについて考えるための土台ができたのであれば、この会は大成功です。その土台をもとに、また明日から地域づくりについて考えてみてください。」と話されました。
哲学カフェを通して、参加者からは「地域づくりについて改めて考えることができた。」や「いろいろな人のお話を聞くことで、様々な視点での考え方を知ることができました。」、「正しさを追求するのではなく、決して否定されず、誰もが受容される空間で小川先生が一人ひとりの言葉をキャッチしてくれたので、みんなが安心して意見が言えていた。」などの声があり、有意義な時間を過ごすことができた様子でした。
地域づくり課では、毎年度、地域活性化のための情報や意見を交換する「対話の場」の開催を予定しております。お楽しみに!
開催日時及び開催場所
令和6年8月4日(日曜日)14時~16時(開場13時30分)
丸亀市市民交流活動センターマルタス 2階 Room 3・4
テーマ
地域づくりとは何か
ファシリテーター
哲学者・山口大学国際総合科学部教授 小川仁志 さん
定員
50名(先着順) 参加費無料