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令和7年度協働管理職研修会を行いました

ページID:0038973 更新日:2025年11月7日更新 印刷ページ表示

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 本市では、「丸亀市自治基本条例」及び「信頼で築く丸亀市さわやか協働推進条例」、令和6年度から5年間を計画期間とする「第2次丸亀市協働推進計画」に基づき、「市民等の力が生かせる協働のまち・いきいきとした個性豊かで活力あふれるまちづくり」を進めています。その取り組みの一環として、令和7年10月8日(水曜日)に「協働のツボはまずは身近なところから」と題して、管理職対象の協働研修会を開催しました。

 今回は、特定非営利活動法人iさいと代表理事の井上 優さんを講師にお迎えし、協働の可能性や地域との関係性構築、行政の役割と可能性について先進事例を交えてご紹介いただくとともに、後半では部下とのコミュニケーションやSWOT分析による課題整理と戦略立案についてワークを実施しました。

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 まず初めに、「なぜ協働が必要か?」ということについてお話しいただきました。

 近年、行政が抱える課題は複雑化し、災害対応や福祉、居住支援、子育て支援など、単独の部署や行政だけで解決できる問題は少なくなっています。こうした背景から、国は地域再生法や「まち・ひと・しごと創生」政策を打ち出し、自治体には「参画と協働」を求めています。丸亀市でも自治基本条例において、協働の理念が明文化されており、行政と地域が力を合わせる仕組みづくりが進められています。「協働」とは、ある課題などにかかわる当事者が公平な立場で互いの利点を活かして課題解決を図る手法や手段のことで、単なる業務連携ではなく、地域の多様な主体と信頼関係を築き、課題解決に向けて共に動くことが重要です。行政は情報や制度、地域は人材やアイデアという強みを持っています。これらを掛け合わせることで、持続可能なまちづくりが可能になります。今後、定年延長や高齢化により市民活動の担い手不足が懸念される中、行政と地域が協働する仕組みづくりはますます不可欠となっています。

 行政の仕事は専門性が高く、部署ごとに異なる文化や考え方があります。そのため、同じ言葉を使っていても、相手によってニュアンスが異なることがあります。地域の方や企業、NPOと連携する際にもこうした違いを理解し、互いを尊重することが重要です。

 また、課題解決には行政だけでなく地域の多様なプレーヤーの力が欠かせません。企業、団体、地域コミュニティ、専門家など、地域には想像以上に多様な人材やネットワークがあり、それぞれが持つリソースを組み合わせることでより大きな成果につながります。キーマンとなる人を見つけて、行政職員が「コーディネーター」として行政と地域の間をつなぎ、共通の目的を共有することでプロジェクトはスムーズに進んでいき、「できない」と思っていたことも「できる」に変わっていきます。

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 協働を進めるうえで最も重要なのは「伝える」ではなく「伝わる」ことです。多くの場合、わたしたちは「伝えたから終わり」と考えがちですが、実際には相手に理解され、納得され、行動につながることが本質です。伝えることは自分が主体ですが、伝わるためには相手の立場や状況を考え、反応を観察しながらコミュニケーションをとる必要があります。これは、行政職員と地域住民、企業、NPOなど異なる立場の人々が協働する場面で特に重要です。言葉だけでなく非言語情報も大きな要素です。表情、声のトーン、姿勢など言語以外の情報がコミュニケーションの55%を占めるとも言われています。つまり、話す内容以上に「どう伝えるか」が信頼関係を築くカギとなります。井上先生からは、相手に向き合う姿勢を示すことや体を開いて話を聞くこと(相手に「へそ」を向ける)、そして「うん」「そうだね」「なるほど」といった相槌を適切に使うことが重要であると話されました。こうした小さな工夫が相手に「受け止めてもらっている」という安心感を与えます。

 また、最近の若手職員は「お互いに助け合う」「個性を尊重する」「丁寧な指導」を求める傾向が強く、背中を見て学ぶ時代から対話とサポートの時代へと変化しています。民間調査によると、理想の職場像として「一人ひとりに丁寧に指導する」「意見を尊重する」が上位に挙がっており、これは行政職員にも当てはまる傾向です。こうした価値観の変化を理解し、部下とのコミュニケーションに活かすことが組織の活性化につながります。この姿勢は地域との関係にも共通します。地域には多様な文化や価値観があり、同じ言葉でも意味が異なることがあります。例えば、行政側が「協働」と言っても、地域住民には「負担が増えるのでは」という不安が生じる場合があります。誤解を防ぐためには、相手の背景や考え方を理解し、押しつけではなく対話を重ねることが不可欠です。部下との関係や地域との協働において、「話す力」以上に重要なのは「聞く力」です。「聞く力」とは、単に耳を傾けるだけでなく、相手の話を遮らず、共感を示し、体の向きや姿勢で「受け止めている」ことを伝えるだけで、信頼関係は大きく変わっていきます。

 さらに、協働の場では上下関係や契約関係が存在するため、相手が構えてしまうことがあります。行政側が「委託する立場」であることを意識しすぎると、地域側は「評価される」「監視される」と感じることがあります。こうした心理的な壁を取り除くためには、対話の中で「一緒に考える」「ありがとうと伝える」など、対等な関係を築く工夫が必要です。信頼関係は一朝一夕には築けませんが、日常の業務や地域活動の中でこうした積み重ねを意識することで協働の基盤が強化されます。

 伝わるためには、「相手の立場や背景を理解する」「反応を観察し、必要に応じて補足する」「プラスの言葉を使い、押し付けではなく共感を意識する」「多様な視点を持ち、先入観を外す」ことがポイントです。

 学習院大学の木下名誉教授の言葉にもあるように、「多数意見を正しいと錯覚しない」ことも大切です。正解は一つではなく、立場によって見方は変わります。自身の意見が押しつけにならないように丁寧なコミュニケーションを心がける必要があります。

 ​市民活動の父とも呼ばれたドラッカーの言葉を引用しながら、部下への指導は「手伝う視点」で行うことが重要だと学びました。方向性を示しつつ、目的設定は本人に委ねる。この考え方は協働事業にも通じる部分があります。事業の先に何があるのか、受益者は誰か、継続性はどのように担保するのかを考えながら進めていくことが求められています。

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SWOT分析を活用した課題整理と協働の視点

 最後に、行政職員が地域と協働するための視点を深めるためにSWOT分析による課題整理と戦略立案についてワークを実施しました。SWOT分析は企業の戦略立案でよく使われる手法ですが、行政の現場でも「現状を客観的に把握し、今後の方向性を考える」ために有効です。

SWOT分析とは

・強み(Strength):課や組織の内部資源、人的スキル、予算など。

・弱み(Weekness):課題や不足している能力。

・機会(Opportunity):外部環境の追い風となる要因(重点施策や地域の協力など)。

・脅威(Threat):逆風となる要因(予算削減、地域の高齢化など)。

 これらをマトリックスに整理することで、課の現状を「見える化」し、どのような取り組みが必要か明確にします。参加した職員は、自分の課の強み・弱み。外部環境の機会・脅威を洗い出し、今後の運営方針や課題解決のために何をすべきかを考えました。さらに、管理職として「どのようなマネジメントを行うか」も具体的に記載しました。強み・弱み・機会・脅威を可視化することで、課の運営や協働の戦略を立てやすくなります。事業の目的や継続性を意識し、小さな成功体験を積み重ねることが職員育成にもつながります。協働は、地域課題の解決だけでなく、職員の企画力や調整力を高める手段にもなりえます。

 また、地域資源の活用も重要です。行政は情報や機材など多くの資源を持っていますが、地域には多様な人材やアイデアがあります。鹿児島県南九州市では、行政と市民が協働し、空き家再生や観光資源活用を実現した事例が紹介されました。また、保育所や学校と地域が協力し、見守り活動や安全対策を行うなど、小さな工夫でウィンウィンの関係を築けます。協働は「できない」と決めつけず、地域の潜在力を信じることから始まります。行政課題は複雑化しており、単独の課だけで解決することは困難です。地域や関係機関との連携が不可欠であり、そのためには「対等な立場で話し合う姿勢」や「現場の声を丁寧に聞く力」が重要です。

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 今回の研修では、行政と地域がともに課題解決に取り組むための「協働」の重要性を再確認しました。災害対応や福祉、子育て支援など、現代の課題は複雑で行政だけでは対応できません。国の政策や丸亀市自治基本条例に示されるように、地域との連携は不可欠であり、本市においてもその実践が求められております。研修の中で特に強調されたのは、協働の基盤となるコミュニケーションです。「伝える」ではなく「伝わる」ことを意識し、相手の立場を理解しながら丁寧に対話することが信頼関係を築くカギです。非言語情報や聞く力を重視し、相槌や共感の言葉を使うことで、職場でも地域でも円滑な協働が可能になります。また、SWOT分析を通じて現状を整理し、課題解決の方向性を考える手法も学びました。協働は地域課題の解決だけでなく、職員の企画力や調整力を高める機会でもあります。どの課にいても、地域とのつながりを意識し、信頼関係を築くことが重要であるとともに、行政が持つ情報や制度、地域が持つ人材やアイデアを掛け合わせることで、持続可能なまちづくりが実現します。

 研修後のアンケートからは「相手の話を聞くときはへそを向けて聞くようにしたい」「伝わること・聞くことを意識していきたい」などの感想が多くあり、皆さんの意識が少し変わったように感じました。今回の研修を通じて得た知識と気づきを日常業務や地域活動に活かし、行政と地域がともに未来を築くための第一歩となればと思いました。